HeatWave技術検証で見えたデータドリブン経営における分析基盤の最適解

パナソニック インフォメーションシステムズ

情報・通信業

HeatWave PoCサービス

概要

課題

  • パナソニックグループでは保有する大量データをビジネス活用するためのプラットフォーム導入を検討していた
  • MySQL互換のデータウェアハウス検証にあたり技術パートナーを探していた

解決策

  • データ活用の最新機能を搭載したHeatWaveの検証を実施
  • PoC環境構築・技術ノウハウ提供をスマートスタイルに依頼

結果

  • ユースケースごとに競合製品の性能/運用評価を行い、分析基盤の最適解を確立
  • Autopilot IndexingやGenAIの活用で運用工数を大幅に削減できる見通し
  • グループIT戦略の一環でデータ活用基盤ノウハウを社内外へ展開予定

Interview

  • パナソニック インフォメーションシステムズ

    インフラソリューション本部 プラットフォームサービス事業部 インフラ標準サービス部 DB基盤チーム

    チームリーダー 辻本 様

    (部署名や肩書は取材当時のもの)

  • インフラソリューション本部 プラットフォームサービス事業部 インフラ標準サービス部 DB基盤チーム

    主任 倉重 様

    (部署名や肩書は取材当時のもの)

  • インフラソリューション本部 プラットフォームサービス事業部 インフラ標準サービス部 DB基盤チーム

    鈴木 様

    (部署名や肩書は取材当時のもの)

  • インフラソリューション本部 プラットフォームサービス事業部 インフラ標準サービス部 DB基盤チーム

    白神 様

    (部署名や肩書は取材当時のもの)

パナソニック インフォメーションシステムズ(以下、パナソニックIS)は「デジタルで、幸せをつくろう。」というビジョンを掲げ、パナソニックグループのIT戦略の中核を担う企業です。同社はスマートスタイルの技術支援のもと、フルマネージド・データベースとデータ分析基盤の両方の機能を持つHeatWaveの検証を行いました。本記事では検証の経緯や検証結果について、同社インフラソリューション本部 プラットフォームサービス事業部 インフラ標準サービス部 DB基盤チーム チームリーダーの辻本様、主任の倉重様、検証メンバーの白神(しらが)様、鈴木様にお話をうかがいました。

パナソニックグループが進めるPanasonic Transformationとは

パナソニックグループでは、DX(デジタルトランスフォーメーション)を軸としたグループ横断の取り組みとしてPanasonic Transformation(以下PX) を掲げ、IT刷新に加え多様性・公平性・包括性を重視したオープンでフラットな組織カルチャーづくりや業務プロセス変革を進めています。

弊社は、グループの重要な経営資源であるデータをビジネス資産として活用するため、システムのモダナイゼーション、クラウド活用、データドリブン基盤の構築、サプライチェーンの最適化など、IT変革のための様々な施策を進めています。将来的には社内にノウハウを蓄積し、外部のお客様へビジネス変革の価値を提供することを目指しています。

分析基盤としてHeatWaveの検証を行った背景

パナソニックグループでは、大小含め2,000近いデータベース環境が日々稼働しています。 2011年からオンプレミスのOracle Exadataを25台以上運用し、2020 年には AWS RDSで60 以上のデータベースを稼働させる など、クラウド活用を進めています。2023年からは基幹系システムをOracle Cloud上のExadata Database Serviceへ段階的に移行し、マルチクラウド環境でのデータ活用を加速させています。

社内にはMySQLで構築されたシステムも複数あり、これらをクラウド上にマイグレーションする方法を検討していました。また、新たに取得するデータの分析基盤としてExadata 以外の3つのDWH(データウェアハウス)製品を検討しており、その一つとして注目したのがトランザクション/分析/機械学習/生成 AIを一つのエンジンで統合するHeatWaveです。ワンプラットフォームでデータの統合/分析/活用まで完結できることは、データをビジネス活用する上でメリットになると考えました。パナソニックグループではAWSとOracle Cloudを利用しており、両方の環境に親和性があることも判断ポイントとなりました。HeatWaveのユーザーコミュニティ「HeatWavejp」で製品メリットなどを定期的に情報収集していたこともあり、弊社の分析基盤候補として本格的な検証に踏み切りました。

インフラソリューション本部 プラットフォームサービス事業部 インフラ標準サービス DB基盤チーム チームリーダー 辻本様

スマートスタイルにHeatWaveのPoC支援を依頼

スマートスタイルさんとは外部イベントでの技術交流を通じて関わりがあり、以前MySQLシステムの支援をしていただいたこともあって、MySQL分野での技術力と豊富な実績から高い信頼を寄せていました。今回はPoC環境の構築から評価レポート作成のための情報整理までご支援いただけたので、私たちはビジネス要件の検討に専念することができました。

スマートスタイルが行った支援
フェーズ 支援内容 効果
PoC環境構築 OCIおよびHeatWave環境の構築 構築期間を短縮し早期に検証をスタート
ナレッジ提供 MySQLの基礎からHeatWave 付随機能
(AutoML・GenAI)をハンズオンで共有
MySQL, HeatWaveの習熟度を底上げ
検証シナリオ設計 PoC実施後の製品評価、検証結果取りまとめの支援 検証レポートを社内へ展開
メーカー協力調整 メーカー問合せ、追加機能の要求 PoC 期間中の疑問を即時に解消

検証メンバーにはMySQLに習熟していないメンバーもいましたが、スマートスタイルさんにMySQLやHeatWaveの基本機能を手厚くレクチャーいただけたため、スムーズにプロジェクトを進めることができました。

HeatWave導入にあたり検証したポイント

グループの重要なシステムの基盤に加え、社外サービス基盤としての利用も想定して検証を行いました。具体的には社内の運用基準を満たせるか、可用性・セキュリティを担保できるかが検証のポイントとなりました。

  1. 可用性・業務継続性:高可用性構成/自動フェイルオーバー/クロスリージョンバックアップでSLAをクリアできるか
  2. セキュリティ:個人情報を扱うシステムへの適用可否
  3. 運用性:既存で運用していたMySQL監視手順を実行できるか
  4. HeatWave付随機能:Autopilot/GenAIを使って運用を効率化できるか

運用面ではパフォーマンス監視や監査ログ取得で必要な機能が一部不足しており、弊社の運用基準に合わせるためスクリプトを自作して機能を補完する必要がありました。この点はスマートスタイルさんにメーカーへの要望を上げていただきましたので、今後の機能追加を期待したいと思います。

セキュリティ面ではHeatWaveはMySQL Enterprise Editionと同等のセキュリティ機能を備えているため、重要度の高いシステムへの適用も問題ないと判断しています。

HeatWave付随機能のAutopilot Indexingは、機械学習で最適なインデックスを提案してくれるため、チューニングにかかる工数を大幅に削減しながら性能改善ができるのが魅力的に感じました。この機能でスロークエリを検証した結果、処理時間が半分になりました。GenAIは、手順書や運用マニュアルを学習させるとコマンドや作業フローを自然言語で回答してくれるため、問い合わせ対応の手間を大幅に減らせる可能性を感じました。

DWHとしてのメリット

HeatWaveは列指向のインメモリ処理を備えており、Exadataと比べ高いパフォーマンスを低コストで出せるところがメリットだと感じました。従来はレポート生成や大量データの集計に数十分かかっていた処理が画面を更新する一瞬の間に完了するなど、データ活用の敷居が一気に下がりました。

SnowflakeやAutonomous Data Warehouse(ADW)など他のDWH製品と比べると、HeatWaveは元々OLTPのデータベース製品であるため単純なセレクトの問い合わせやインサートの処理が早く、OLAPにも対応しているので分析処理は他製品と比べても各段に早いと感じました。Snowflakeは分析が早い一方トランザクションが遅く、ADWはトランザクションが早い一方分析が遅いなど長短がありますが、HeatWaveは両製品と比べて欠点が少なく、OLTPとOLAPを両方使うシーンで本領を発揮すると思います。

Exadata / Snowflake / ADWとの比較検証結果

オンプレミスで長年利用してきたExadataを含む4種類のデータベースサービスを同一条件で検証してみました。検証は「単純 SQL 処理」「分析 SQL 処理」「逐次 DML 更新」「一括バルクロード」の4ユースケースで行い、データ量は年間実績相当の十数億レコードを使用しました。結果を整理すると、次のような特徴が明らかになりました。

  1. 単純 SQL 処理
    HeatWaveは既存オンプレミス構成と比べて桁違いに速い応答時間となりました。Snowflake/ADWも一定の応答速度を示しましたが、HeatWaveのインメモリ処理による「ほぼ瞬時の返答」が際立つ結果となりました。
  2. 分析 SQL 処理
    列指向インメモリの強みが最も発揮される領域で、HeatWaveはSnowflakeや従来基盤のExadataより優位な結果となりました。特に複雑集計をリアルタイムレポートへ転用できる点が高評価でした。
  3. 逐次 DML 更新
    Snowflakeは分析特化ゆえに取引系処理で待ち時間が目立つ一方、HeatWaveはOLTP処理でも安定して速く、ADWと同等以上のスループットを確保。取引系と分析系を同一クラスタで同時運用できるバランスの良さが際立つ結果となりました。
  4. 一括バルクロード
    大量データ取り込みではHeatWaveが最短時間を記録。OCI Object Storageとの直結ロードと自動並列化により、夜間バッチの時間枠に十分収まる結果となりました。

今回の検証により、HeatWaveは性能面・運用面で優位な結果となりました。SnowflakeやADWもそれぞれ強みを持ちますが、データを即座に分析に活かす「HTAP(処理と分析の統合)」を重視する企業にとって、HeatWaveは最適な選択肢になり得ると思います。

インフラソリューション本部 プラットフォームサービス事業部 インフラ標準サービス部 DB基盤チーム 主任 倉重様



インフラソリューション本部 プラットフォームサービス事業部 インフラ標準サービス部 DB基盤チーム 鈴木様(左)白神様(右)

検証を振り返って 苦労された点や印象に残っている点など

強く印象に残っているのは、これまで使っていたMySQLのSQLがほぼ手直しすることなく動いた点です。この優れた互換性は移行時の工数や学習コストの削減に大きく役立つと思います。また、数億件規模の集計でも画面を更新するわずかな間に完了し、インメモリ処理の速さに驚きました。

GenAIの機能でPDFの運用手順書を取り込んで自然言語でコマンド例を問い合わせるデモを実施してみましたが、即座に正確な回答が返る結果をみて、日々の運用工数を大幅に削減できる可能性を感じました。

検証を通じて、HeatWaveは取引系と分析系を一体運用できてデータマートへのコピーや ETLの手間が大幅に減ることや、MySQL完全互換で既存のクエリがそのまま使えて学習コストを減らせる利便性を感じました。また、AutopilotやGenAIを有効活用することで運用を効率化しながら高度な活用が期待できると感じました。

HeatWave導入後の展望

今回の検証で確認したHeatWaveの高性能かつ効率的な運用を実現する分析基盤の機能は、パナソニックグループの PXを前進させる製品になり得ると感じています。次のステップでは検証で得られたノウハウを社外のお客さまへ提供し、ビジネスの付加価値向上に役立てていただきたいと思います。今回の検証で明らかになった自動チューニングの手法や運用ノウハウは、今後再現できる形で整理し展開していきたいと思います。
弊社が培ってきたノウハウでお客様や社会全体のデータ活用を後押しする
――それが私たちの描くPXの次の姿です。

左から 鈴木様、白神様、倉重様、辻本様

スマートスタイルの対応範囲

パナソニック インフォメーションシステムズ

情報・通信業

https://panasonic.co.jp/is-c/

住 所:〒104-0061 東京都中央区銀座8丁目21番1号

事業内容:情報サービス